ある金髪の少女
学習塾に勤めている時に、こんな生徒がいた。入塾した日は、その生徒の髪の毛は、黒くて普通の髪型だった。それが、その次の時には、金髪になっていた。当然、少女は、金髪で塾に行くことはいけないことだと知っていたが、なぜかその日は、金髪で塾に来たのだ。
驚いたのは、その日の教科担当だ。「なんだ!?この生徒は」と思ったのだろう。彼女を見るなり、「なんだ!その髪の毛は!家に帰って黒くして来い!」と怒鳴って、その生徒を帰そうとした。ちょうど、隣の教室で授業をしていた私は、その騒ぎを聞きつけて、その生徒を預かった。受け持ちのクラスには、問題演習をさせて、その生徒と話をした。
中土井 :どうしたんだ、その髪の毛?
Aさん :え~?・・・・。
中土井 :この前は、普通の髪の毛の色だったじゃないか。
Aさん :そう。いつもは、この色なんだけど、これじゃまずいと思ってスプレーで塗っていたんだ。
中土井 :今日は、どうしたの?
Aさん :今日は、スプレーで塗るのが間に合わないから、塾を休むよりいいかと思って、そのまま来
たんだ。
中土井 :偉いじゃん!そうだよ。塾を休むより来た方がいいからな。でも、B先生は、君を見て驚い
て、なめられちゃいけないと思って、叱ったんだな。Aさんも驚いただろう?急に叱られて。
Aさん :むかついた。・・・・。
中土井 :そうだよな。でもB先生は、事情を知らないからな。でも、この髪、ちゃんと染め直して、黒く
しなければダメだぞ。君もそう思ってるんだろ?
Aさん :まあ。
中土井 :じゃあ、教室に入ろうよ。B先生に言っておくから。君の勉強したいって気持ちは分かった
よ。次までには、髪の毛黒くして来いよ。
Aさん :わかった。
Aさんは、この一件以来、髪の毛を黒くして、塾に通い続けた。Aさんは、何かあると私のところに来て、色々と相談するようになった。時には厳しく、時には優しくAさんと接したが、Aさんにとっては、私は話の分かる先生だったのだろう。それは、Aさんの事情を聞いてあげたその日が、きっかけだったのだ。悪いと思われる状況の中でも良いことはあるのだ。そのことを私たちは、汲んであげることだ。そうすれば、関係はきっと以前よりも良くなるはずだ。
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